ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2
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2013/10/8
内容紹介
現代日本の物語的想像力の行方とは? オタクを中心として大量に消費されているライトノベル、ゲーム等の作品分析を通じて、ポストモダン社会の生をも見通す。文芸批評に新たな地平を切り拓いた快著。
前著より5年半! 物語の行方がここにある!!
話題を呼んだ前作『動物化するポストモダン』より5年半の待望の続編です。本書では、前作の問題意識(オタクの消費行動を分析することで現代社会を読み解く)を引き継ぎつつ、さらに「涼宮ハルヒ」シリーズなどのライトノベル、「ひぐらしのなく頃に」などのゲーム、舞城王太郎の小説などを読解することを通じて、日本の物語(文学)の行方について解いていきます。明治以降の「自然主義的リアリズム」、大塚英志の「まんが・アニメ的リアリズム」に対して「ゲーム的リアリズム」とは何か? まさに文芸批評の枠を超えた快著です。
著者からのコメント
こんにちは。
こちらでははじめまして。著者の東浩紀です。
さて、この『ゲーム的リアリズムの誕生』は、『動物化するポストモダン』の続
編ですが、それを読んでいないひとでも読めるように書かれた書物です。とりあ
えずは、ライトノベルやノベル系のアドベンチャーゲームに関心のあるひとに読
んでいただきたいと思っていますが、それらの作品に触れたことがなくても、
現代のエンターテインメントに興味がある読者一般に広く読まれる内容になって
いると思います。
本書の主題は、ひとことで言えば、「ポストモダン、すなわち物語の力が衰え
た世界において、それでも物語を語ろうとすればどうなるか」というものです。
この課題は、現代の多くの作家が直面するはずのものですが、僕はこの本では、
いくつかの理由からライトノベルと美少女ゲームを分析対象として選びまし
た。状況や作品については解説が入るので、特別の予備知識は必要ありません。
議論は2章に分かれており、第1章では、新城カズマの入門書を用いてライトノ
ベルについて最低限の知識を確認したうえで、評論家の大塚英志の議論、とりわ
け『キャラクター小説の作り方』を批判的に読みながら、「まんが・アニメ的リ
アリズム」「ゲーム的リアリズム」の理論が探究されます。第2章では、その結
果を受けて、『All You Need Is Kill』『ONE』『Ever17』『ひぐらしのな
く頃に』『九十九十九』が分析されます。参照対象の中心はライトノベルと美
少女ゲームですが、『九十九十九』が挙がっていることからわかるように、一般
小説へも言及しています。とくに第2章の冒頭では、伝統的な文芸評論への批
判も記されています。付録として、清涼院流水論と『AIR』論を収録していま
す。『ファウスト』連載時の原稿は完全に書きかえられており、書き下ろしと
言って差し支えありません。
僕は1993年に批評家としてデビューしており、振り返るとすでに15年近いキャ
リアをもっています。この『ゲーム的リアリズムの誕生』には、その長さを受け
て、さまざまな文脈が流れ込んでいます。この本は、ある見方で見れば、僕がは
じめて記した本格的な作品批評であり、他方では、僕がここ数年、あまり書籍に
ならないかたちで行ってきたライトノベル・ブームへの関与の総決算でもありま
す。またそれは、前著と同じく、社会学的な文脈でも読めるでしょう。むろ
ん、近年のオタクブーム、コンテンツブームの流れのなかにもあります。
けれども、僕個人の文脈を言えば、これは、僕がはじめて、最初から最後まで
を体系的に構成し、その意図がなんとか実現できた本です。
僕のむかしからの読者は知っているかもしれませんが、僕は学生のころ、
ジャック・デリダという哲学者の研究をしていました。デリダの思想には「脱構
築」というキーワードがあり、それは要は、真の思想は体系化できないという教
えです。そのせいもあって、僕はいわば、体系的な書籍を書くことができない体
質になっていました。本書は、その体質を改善するために記した本でもありま
す。したがって、本書は、内容に読者のみなさんが同意されるかどうかは横に措
いて、とりあえずは僕のいままでの本のなかで、もっとも読みやすく、ま
た論理的な著作になっていると思います。
「批評」というと、聞き慣れないタームを並べ立て、単なる印象論を難し
く理論武装するだけの困った言説というイメージがあるかもしれません。実際
に、世の中には、そのように非難されても仕方がない「批評」が数多くありま
す。批評家のひとりとして、そのような状況を恥じるとともに、なんとかオルタ
ナティブを差し出すことができないか、と考えて記したのがこの本です。
多くの読者に読んでもらいたいと思います。よろしくお願いします。
著者について
東 浩紀(あずま ひろき)
1971年生まれ。哲学者・批評家。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。
2006年10月より、東京工業大学世界文明センター特任教授。
単著に『存在論的、郵便的』(新潮社、第21回サントリー学芸賞)、『郵便的不安
たち』(朝日新聞社)、『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)、共著
に『自由を考える』『東京から考える』(以上、NHKブックス)、編著に
『網状言論F改 ポストモダン・オタク・セクシュアリティ』『波状言論S改
社会学・メタゲーム・自由』(以上、青土社)など。
2007年4月より講談社BOXから評論集三巻を刊行。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
東/浩紀
1971年生まれ。哲学者・批評家。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2006年10月より、東京工業大学世界文明センター特任教授。単著に『存在論的、郵便的』(新潮社、第二一回サントリー学芸賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)